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2020/08/16 17:04

中屋敷さんは、小岩井農場もある岩手県の雫石で、
2004年に繁殖牛1頭から就農された黒毛和牛の繁殖農家さんです。
(繁殖農家=黒毛のお母さん牛を飼っていて、生まれた仔牛を肥育農家さんに販売する
 10カ月齢くらいまで育てる農家さん。)

自分が初めてお会いしたのはもう10年くらい前です。
繁殖農家さんなのに、自分の育てた仔牛が肥育農家さんに育てられて
お肉として出荷されるときに芝浦市場に枝肉を確認にきたりして
凄い熱心な人だなぁ!とびっくりして、すぐに意気投合しました。

中屋敷さんはその後もどんどん新たなチャレンジを進めて、
今は150頭くらいの繁殖牛の飼育に加えて、一部、黒毛の肥育をしたり、
近隣の未利用草地を借りて、牧草の収穫・販売もされています。

そんな中、あるとき、酪農家さんから話を聞いて
ジャージー雄が生まれた時の現実を知りました。
乳牛は赤ちゃんを産んで初めて、ミルクを出してくれるので、
男の子は搾乳牛とはなれずに、肉牛として育てることになります。
そんな乳牛の中でも特にジャージーは、餌をどれだけ食べても、
肉量がつかないという理由で、経済価値を見出されずに
何百円という非常に安い単価で取引されたり(その当時、黒毛は生まれたてでも50万円)、
スモール市場に出ても、売れずに戻ってくることもあると聞きました。
同じ牛でありながら、その命の単価の差を知って、私は衝撃を受けました。

同じタイミングで知り合いの農家さんが育てたジャージー牛のお肉を食べることができて、
めちゃくちゃ美味しいと感動し、この牛の命に価値が見いだされないなんて、
なんてもったいないことだろう、と思いました。
すると、同じ想いを持っていた中屋敷さんがジャージーの肥育をしてくれることになり、
2015年から、導入代・餌代をお互いに折半しての取り組みがはじまりました。

その後は、同じ酪農家さんの搾乳牛の役割を終えたジャージー母さんを
中屋敷さんが約半年再肥育をして、お肉の価値を上げてお届けしたり、
ジャージーと黒毛和牛を掛け合わせたジャー黒を肥育したり、
いろんな新しいことも取り入れながらのチャレンジです。
実際にお肉を届けたときの料理人さんの声を参考にしながら、
リアルな消費現場では、今後どんなお肉が求められていくのか、
情報を共有しながら、取り組みを進めています。

中屋敷さんは今、地域資源を生かした肉牛生産に向けて、
約2年前から繫がりのできた東北農研さんのご協力のもと、
去年から飼料用の大豆の栽培に取り組み、大豆サイレージの給餌をはじめています。

岩手県雫石の土地を生かした放牧も取り入れながら、
また地域資源を生かして、自給飼料で育てる、未来ある牛肉生産の一つの形を
一緒に探っていけたら、と思います。
そのためには皆さんに「美味しい!」と喜んで食べてもらえるような努力を
それぞれの立ち位置でベストを尽くしていきたいです。

そんな中屋敷さんの育てる牛たちもこれから少しずつ登場してくる予定です。
同じ国産のお肉でも、それぞれの地域、品種、餌による個性の差を
楽しんでいただけたら嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

2020.8.16 荻澤紀子