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2020/05/06 19:06

田村牧場は、朝ドラの“あまちゃん”で有名になった岩手県久慈市にあります。
私が田村社長と初めてお会いしたのは、東日本大震災後の2011年なので、
初めて会ってから、かれこれ9年になります。
元々はホルスタインから牛乳を搾る酪農家であり、
一部、黒毛の繁殖・肥育もやられていましたが、
短角牛を飼い始めたのは、お会いするほんの数年前からでした。

田村社長は、ある時、食べた短角牛の美味しさにびっくり、
そして、話を聞いてみたら、短角牛の生産農家が年々減っているとのこと。
それを知って、
「こんな美味しいお肉をなくすのはもったいない。自分もやってみよう!」
と思って、短角牛の繁殖・肥育に取り組み始めたそうです。
ただ、問題は牛舎がなかったことなのですが、
元々、黒毛の繁殖牛と仔牛は周年放牧していたので、
同じように短角牛の繁殖牛と仔牛は周年放牧することにしたそうです。

なので、短角牛は田村社長自身がずっと食べ続けたくて
育て始めた牛肉なのです。
以前、牧場にお客様のバイヤーさんたちをご案内したときに、
搾乳牛たちがいるパーラーのほうを指して
「こちらは私の生活を支えてくれる牛たちです。」
と、ホルスタインたちへの感謝を伝え、
続いて、短角牛の放牧地を指して、
「こちらは私が好きで飼ってる牛たちです。」
と、短角牛たちへは愛を伝えられたのが印象的です。

そんな短角牛たちが食べているのは、
9割以上が自家産や、地域で出るものたち。
牛の餌用トウモロコシであるデントコーンサイレージを主体に
飼料米、オカラを配合したもの、そして牧草がメインのごはん。
一般的な肥育牛に与えられるような配合飼料は、
嗜好性を上げるためや、繋ぎのためにほんの少々です。

幼少期の放牧地でのめいっぱいの運動、
そして、これらの牛の本来の生理に近い食べものたち、
それが短角牛らしい赤身肉の力強さをつくってくれています。
さらには、めぐりめぐって、短角牛がいてくれることで
放牧地や地域が守られることにも繋がっています。

そんな風にたくさんの努力といろんな想いが詰まった牛たちを
私は東京で受け止めて、短角牛たちの肉質が一番良い状態で、
皆さんに食べて頂けるように、枝肉の状態で30-45日間吊るし熟成をさせて
お届けさせてもらっています。

これまでは主に飲食店さんにお届けさせてもらってきましたが、
現在のコロナ禍で、今後の世の中がどうなるか分からない中、
これだけ大切に育ててくれた子たちの出口をあらゆる形でつくって、
これからも大好きな短角牛たちを安心して、飼い続けてもらいたい。
そんな想いで、こちらのオンラインショップでの販売にチャレンジする次第です。
どうぞよろしくお願いいたします。

2020.5.6 荻澤紀子